インド代理出産の外国人依頼に対する取り締まりによる実質的な閉鎖、クーデター勃発により軍(Junta)支配がなされたタイでの商業代理出産、卵子提供、男女産み分けなどの着床前診断などの先進生殖医療の禁止、この禁止の動きに加え、タイで起きた世界からの依頼者による代理出産に関わる大きな事件が拍車を掛け、世界中の代理出産に規制が開始され、次第に代理出産依頼が難しい状況へと世界全般が変化してきたことをお伝えしてきました。
2014年秋にタイが代理出産を含む生殖医療の扉を閉めたことにより、代理出産を必要とした依頼者は合法な場所をさらに探しました。このころ、弊社が調査を行っていたのはメキシコで、世界の代理出産に関わる少数の法務専門家による初の視察が15年1月にメキシコのカンクーンの生殖医療機関、及び、唯一メキシコで合法であったタバスコ州にて開催されました。この時点では、まだタバスコ州での代理出産用の出産病院もプログラムを受けるためのシステムは確立されていませんでした。タバスコ州の一番の大手で優秀なことで有名であるエンジェル病院も、代理出産の経験がほとんどなく代理出産のインフラストラクチャーが全くできていない状況でした。
メキシコにおける代理出産に関する法律は、国家によって定められていることではなく、米国同様、各州の法律によって定められています。同年にタバスコ州の民法が変更されたことから、1997年からタバスコ州は32州あるメキシコにおいて商業代理出産が唯一合法であった州でした。同法によると、代理母から出生した子は、合法的に代理出産の依頼者が親であり、彼(ら)に属すると規定されていました。代理出産の過程や方法論に関する詳細な規制は制定されていませんでした。このことも後にタバスコ州における代理出産が閉鎖される原因となります。
(次回は12月第1週号掲載)
当文献は創刊47周年を迎えるニューヨークの日本語新聞New York ビズ 2020年11月7日に掲載されました