2013年のインド代理出産の実質閉鎖後、生殖医療に関する法的規制がなかったタイに代理出産の地が移った直後、タイではクーデターが勃発し、軍(Junta)によって支配されましたが、その軍はまず、代理出産の取り締まりに着手。アジアの商業代理母の中心地になっていたタイ代理出産市場を閉鎖するとの決定後、ダウン症のグラミーちゃん問題と邦人の代理出産が発覚のニュースが世界を駆け巡ったと同時に、進行中であった代理出産ケースのケアが不可能になったタイにて関係者が混乱状況に陥ったことを前回=7月4日号掲載=、お伝えしました。特に、閉鎖を余儀なくされたタイ最大手代理出産クリニック閉鎖は代理母165人もが妊娠中であったためです。
代理出産を完全に否定する軍政府支配下、商業代理出産契約により妊娠している代理母らが妊娠を実質的にどう管理していくかという不安以上に、実際、子を出産したとき、子をいかに依頼者の手に渡し、出国させるか、についての懸念が関係者内に広がりました。この商業ビジネス自体が、単なる物を流通させるものではなく、命、人権、国籍に関わるものであるため、先が見えない依頼者達は、彼らの妊娠中の代理母を助けるためにタイに入国を急ぎました。
この時点で、タイでは近日中に代理出産に関する法律が制定され、軍政府は”赤ちゃんを永遠(タイに戻らないという前提)にタイから出国させる場合はタイ外務省に許可を得ないといけない”という条件を入れることが発表されており、その申請書の内容はまだ明らかにされていませんでした。7月31日に正式に軍政府商業代理母出産市場の閉鎖を決定したことを受け、それまでのケースに関しては容赦されるのか、もしくは、軍政府が商業代理出産契約であることを隠匿しないといけないとなる場合は、軍政府は出生時に代理母と子の血縁関係を証明するためのDNA鑑定を含む証明を要求してくる可能性があるため、その結果、子は出国できるのか、という懸念が語られました。(注:タイでの可能な代理出産は条件は血縁関係のある無償である場合のみ容認されていたため、血縁関係が証明される必要がある)
(次回は9月第1週号掲載)
当文献は創刊45周年を迎えるニューヨークの日本語新聞New York ビズ 2020年8月1日に掲載されました