“赤ちゃん工場”と言われるほど、世界中からの依頼者が目指す代理出産の中心地であったインドが2003年から徐々に扉を閉じ、法的に曖昧であったタイへと移行し、依頼者もインドから大移動を果たしたことを、前回=8月3日号掲載=のリポートでは、お伝えしました。
インドが代理出産で人気があった理由は、経済的な理由です。米国の代理出産の依頼料金は、最低でも2000万円くらいから始まりますが、当初、インドはこの料金のほぼ10分の1の料金に加えて、斡旋(あっせん)するエージェント料金が乗る数百万円で依頼が可能であったためです。先進国の依頼者にとっては
、自家用車を1台購入する料金と大きく違わず、手が届く料金でした。これは、当該国と依頼者の自国の購買力の違いを利用したものですが、インドにおける商業代理出産が事実上、外国人に閉鎖になったところで、ほぼインド同様の購買力で、しかも、代理出産に関する法規が成立していない場所であったのがタイでした。また、医療も良質であったことも大移動の一つの理由です。タイの病院は清潔で、近代的な施設が珍しいインドと比較して、医療施設も近代的であることも好感が持たれていました。
インドでの代理出産が不可能のなった時点で弊社も日本人の新しいクライアントとから多くの新しい依頼が待っていました。インド政府が商業代理出産の規制を行った時点で、すでにインドで代理出産の契約が開始されているケース、もしくは、代理母が妊娠中であるケースに関しては、関わっているクリニックの法務部を通し、インド政府にそれぞれの依頼者の詳細を報告提出する義務が課され、インド政府ではその情報を管理し、その登録されたケースの赤ちゃんたちは速やかに出国査証を発行するようにリストが作成されました。
弊社もこの時点で、どの国が日本人のクライアントのために安全であるかの調査を開始しました。
(次回掲載は10月第1週号)
当文献は創刊44周年を迎えるニューヨークの日本語新聞New York ビズ 2019年9月7日に掲載されました
代理出産の歴史(5)インド政府の規制でタイに大移動 清潔で近代的医療施設にも好感