査証問題により日本人はインド代理母出産利用は不可か? (2)
2013年3月10日現在、インド人代理母出産を手がけるインドのクリニックへの規制変更の徹底命令は変わりないが、いまだに、今後どのように状況が変化するかは楽観視できない。この状況下、代理母出産を手伝う多くの国の医療コンサルタントはインドから撤退し始めている。
この動きは、この代理母のためのメディカルビザ(医療査証)申請のためには自国の法律との照合性が必要で、自国から代理母出産のために渡航することを承認した書簡発行が必要であるためである。インド側が言う合法の異性同士の2年以上婚姻関係にある夫婦であったとしても、自国が
- 代理母を禁止している、
- 代理母の関する法律がない
場合は、政府がメディカルビザ(医療査証)申請に必要な当書簡を発行しようがない。そのため、多くの国にとってインドでは代理母出産は利用できない、そのためのインド入国は不可、となるからである。先週、弊社が確認したところでは、オーストラリア、英国はもとより、イスラエル、スペインなどの欧州のコンサルタントがインドの代理母契約を勧めることを中止している。弊社も現在、全てのケースをストップし、状況を見極めるために毎日インドから情報収集を行なっている。
3月2日の報告にも書いたとおり、現在、進行中の妊娠については、この制限が遡及して適応されることはないが、登録を必要とされている。これはすでに各クリニックが現在進行形の妊娠依頼者名についてはFRRO(インド移民局管轄外国人登録事務所)への登録を完了している。
しかし、現在進行中の妊娠についても、今後、子を引き取りにインドへ入国する場合、メディカルビザ(医療査証)が必要である。日本の場合は、代理母に関する法律がないので、日本政府(外務省)がインドがメディカルビザ(医療査証)審査のために必要としている必要書類である書簡を発行しようがない。
子を迎えに行く場合は、ツーリストビザ(観光査証)で入国する以外はインドには入国できないが、FRRO(インド移民局管轄外国人登録事務所)で子の出国査証を発行してもらうときにこのことが問題になった場合、海外滞在中の日本人としては在インド日本大使館・日本領事館にこの手続きを促進するための文書の発行の救済措置を懇願することが考えられる。
代理母契約で子が出生したことを前提に、日本人として、(日本人の父親に認知された)日本人である子が自国へ戻れるように日本国に助けを求める、ということになるが、当然ながら、夫婦は子の日本国籍取得のところから準備が必要である。日本の法律では、子を出産した女性が母親であり、母親が日本人である場合は自動的に子は日本国籍が得ることが出来る。
しかし、インド代理母を使用した場合、日本の法律上、インド代理母が母親となるため、父親が日本人の場合のみによる子の日本籍取得は父権認知が必要である。通常、日本人である父親による胎児認知などによって完了される。その後、夫婦の子とするためには国際養子縁組の手続きも必要であるため、代理母の同意書や身分証明書の提出など、前もって法的準備が必要となる。正当にこの手続きを行なったうえで、子の戸籍取得(日本国籍取得~パスポートの取得)を行なっていることが前提となる。
現時点のインドは、内閣が命令を発行し、FRRO(インド移民局管轄外国人登録事務所)の警察が管理を任されている、という状況である。このFRRO(インド移民局管轄外国人登録事務所)の警察は非常に当規制に対し厳しく取り締まっている、という連絡がクリニックから来ている。この取締りは各クリニックの責任とし、各クリニック(医師)はそれぞれの子の両親に各国(自国)の政府(大使館)とのやりとりを任せる以外、方法がない、としている。
3月中旬~下旬にはインドにて医師が構成するインド代理母医師協会が結成される予定になっており、4月までには動きがありえること期待している、とインド医師たちは話している。しかし、現時点では、実質的にインドでの代理母利用は、今後、メディカルビザ(医療査証)で入国しない場合は、当該国が規定しているから反する不当な入国によるものなので子の出国ビザ(出国査証)が発行されるかどうかが不確定な現在、日本人患者にとってはリスクがあるのでお勧めできない。
現在、代理母による妊娠が進行していて、万が一、子の国籍の取得について準備をしていない場合は、法律専門家に代理母との契約の見直しと現状況との照合性、そして、父権認知、養子縁組の手続きを確認する必要がある。
(2013年3月10日現在)