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不妊・生殖ガイドシリーズ2
-不妊とは- ()

不妊とは?

1.始めに

一年以上、妊娠しようと試みられていますか? 不妊症ではないか、と心配になってきていますか? 490万人のアメリカのカップルもなかなか妊娠しない、と懸念を持っていると言われています。事実、7カップルのうち1カップルが生殖期にも関わらず不妊の問題を抱えています。挫折感、嫉妬、罪悪感、怒りを伴うことも多いと思います。しかし、以前と比較して成功率の高い妊娠を成就させる様々な治療、顕微外科手術、体外受精技術等が、躍進を遂げています。今日、多くの場合、専門家は、男性、女性別の不妊理由を特定することが出来ます。現在では、治療を受けるカップルの半数以上が妊娠することが可能になってきています。

 2.まずクリニックに行ってみましょう

最初の時点では、一般的な産婦人科にまず行くことも、不妊治療専門医を訪れることも可能です。不妊治療専門医の中には、産婦人科医でもあり、そして不妊治療をも専門としている医師もいますが、不妊治療専門家医とは生殖内分泌学医の資格を持っている専門医を指します。生殖内分泌学不妊専門医は、産婦人科を副専門分野とし、まず、産婦人科にて実習期間を終えた後、少なくとも2年間の生殖内分泌学の専門のトレーニングを完了し、筆記・口述試験に合格しなければなりません。

(さくらライフセイブ・アソシエイツがご紹介しているReproductive Medicine Associates of New Jersey, RMAの不妊治療専門家は全医師が米国産婦人科医学会から、産婦人科医師としての承認と生殖内分泌不妊専門医師としての2つの資格・承認認可を得ています。)

担当となる専門医師を決定した後、膨大な時間、費用、肉体的及び精神的エネルギーが必要とされる一連の検査を受けることになります。検査を受ける前に、担当専門医師は、患者とそのパートナーの方の全ての医療記録 (以前、不妊検診をしている場合はその記録も含む) を見直します。現担当医師のために、以前の不妊検診・不妊治療に関する資料を揃えておくことは、同様の検査、治療の重複を避けることができるため、時間的にも費用的にも重要です。初めのコンサルテーションはお二人で行かれたほうが良いでしょう。不妊は、お二人で臨まなくてはいけないことであり、カップルとして関わっていくべきことだからです。この最初のコンサルテーションが、お二人の不妊に関して、お二人がどの程度、協力しながら時間を割く必要が出てくるか、を理解し始めるきっかけとなるはずです。

不妊の原因は、男女両方の要因から考えられます。典型的なコンサルテーションでは、医師は女性側にまず、月経が不順であるか、生理痛が重いかどうか、異常な出血・おりものがあるか、性病歴があるか、 (身体の) 病歴があるかなどを訊ねます。又、以前の受胎歴、流産歴、妊娠歴、手術歴、使用してきた避妊方法などの質問事項も含まれます。男性に対しては、性器の損傷、手術、性病歴、医薬品の使用歴、以前父親になったことがあるかどうか、 (身体の) 病歴などが質問事項となります。お二人に対する質問として、どのくらいの期間、妊娠を試みているか、性交の頻度、性交時に潤滑剤を使用しているか、家族に先天性欠損症を持つ人がいるか、などを含みます。不妊に悩むカップルの25%以上が一つ以上の不妊原因があると言われています。このことからも、お二人両方に関わるすべての要因を査定することが大変重要です。

以前の男女関係も含めて、それぞれのパートナーの性的及び生殖活動も鑑みる要因となります。初めのコンサルテーションで、多くの医師が、家族や友人にさえ話したくない不妊に関わる精神的負担について話をしてくれるでしょう。医師は不妊の精密検査や多くの質問がいかに患者の負担になるかをわかっています。患者にとって、懸案や不満がある場合には、いつでも担当医師に伝えることができるような環境にあるべきです。

初めのコンサルテーション後、特に生殖器官に焦点を置いた綿密な身体検査が行われます。ホルモンの不均衡などを調べるため、個人的な状態にもよりますが、ホルモンレベルを調べる血液検査を行う場合もあります。

初回のコンサルテーションの一環として、以前の検査結果記録を指針とし、現在の検査をすぐに始める場合もあります。例えば、何らかの感染が将来の妊娠を妨げるサインがある場合は、すぐに検査しなければなりません。他の多くの検査は、女性の月経周期に合わせて、適切な時期に行われるのが普通です。

3.不妊の要因

3 – 1.男性側の要因

不妊に悩むほぼ40%のカップルに、男性側からのみの原因が、あるいは、少なくとも男性側にも原因があると認められています。このことからも、精子の分析は大変重要です。検査前の48時間は、射精しないようにと指示されます。クリニックか、家にて、自慰の助けによって精子を収集します。また、精子を殺すような物質を含まない特別なコンドームを使用しての性交渉によって収集することも可能です。精子の標本は顕微鏡で濃度、動き、形状などを検査されます。一般的には、2ヶ月から6ヶ月ほどの期間で、2~3回の精液分析をすることをお勧めします。

男性の場合、泌尿器科医、または不妊専門医と相談する必要があるかもしれません。男性側の不妊治療としては何らかの感染がある場合は抗生物質治療、精索静脈瘤 (陰嚢の精嚢静脈の拡張) 等の手術、精子製造を助けるホルモン治療、パートナーの女性の子宮内に精子を入れ受精を助ける治療などが含まれます。体外受精 (IVF) やそれ以外の補助的生殖技術も男性側の不妊治療としても助けになります。

男性側の不妊要因がかなり重度な場合、治療に全く反応しないこともありえます。その場合、担当医師は、匿名の提供者 (ドナー) からの精子を使うことを、ひとつの他のオプションとして勧める場合もあります。

 3 – 2.卵管による要因

受胎には、開いた健康なファロピオ管 (輸卵管 : 卵子が卵巣から子宮に移動する際に通る2つの管) が必要なため、ファロピオ管が開いているか否かの検査は重要です。ファロピオ管、腹膜による要素が不妊の原因となっている場合がおよそ35%もあると言われています。もし子宮内用レントゲン (HSG) が、ファロピオ管が閉鎖していることを示したら、瘢痕組織がみつかる可能性があります。担当専門医師は、ファロピオ管の外側の表面に癒着が形成されていないかどうか、または、ファロピオ管の機能が妨げられていないか、を調べるために腹腔鏡検査 (ラパロスコピー) を行う場合があります。たまに、子宮内用レントゲン (HSG) においても、腹腔鏡検査 (ラパロスコピー) においても、技術上の問題により、ファロピオ管が “閉鎖している” と誤りの結果が出る場合がありますので、ファロピオ管について正確に調べるには両方の検査を行う必要があると言われています。腹腔鏡検査 (ラパロスコピー) は、不妊の原因を徹底的に調べる大切な検査であり、特に高年齢の患者の場合、なるべく早くにこの検査を行ったほうが良いでしょう。比較的年齢の若い患者の場合、子宮内用レントゲン (HSG) によってファロピオ管が開いているという結果が出たとき、または、他の治療を既に始めているときは、この腹腔鏡検査 (ラパロスコピー) を延期することもありますが、もし6ヶ月から12ヶ月の治療を行っても妊娠しない場合は、腹腔鏡検査 (ラパロスコピー) は必ず行われるべきでしょう。

たとえファロピオ管が閉鎖していたり、傷ついていたり、なんらかの損傷があることがわかったとしても、手術によって直せるケースもあります。多くのファロピオ管の疾患は手術によって直せますが、ファロピオ管の傷ついている度合いが重度な場合は、妊娠することがかなり難しいため手術も行われません。この場合は、体外受精が最も信頼性のおける妊娠への方法でしょう。

3 – 3.排卵による要因

女性の月経パターンは排卵を中心に形成されています。不妊の原因の25%は、無秩序または異常な排卵によるものです。基礎体温を測ることは、排卵しているかどうかを見るのに、簡単で費用のかからない方法です。正確に計られ記録された基礎体温表は、排卵後、卵巣が作る女性ホルモン、プロゲステロンの分泌が見ることができるはずです。

月経が始まる前の12日から16日の期間に、プロゲステロンは、子宮内膜が、受精、そして受精卵が育ちやすい環境になるように形成します。

正確に基礎体温表を記録するためには、少なくとも一ヶ月間、毎朝起きた瞬間に、口内で基礎体温を測り、記入する必要があります。通常、排卵によるプロゲステロンの分泌は、0.5 度 (華氏) から1度の体温の上昇を示します。この上昇は、排卵が起こったことを示しています。もし、排卵が起こっていないとしたら、基礎体温の変化は余り見らません。しかし、基礎体温表が、排卵、またはプロゲステロンの製造について完全に表しているか、と言ったらそうとも言えません。風邪や疲れなどの生殖機能周期に無関係な多くの要素も、基礎体温に影響するからです。基礎体温表は排卵が実際起こったのかどうか、また、いつ起こったのか、を知る助けにはなります。ただ、このことは、実際、排卵が起きた場合に、排卵後わかることです。

薬局で処方箋無しで売られている黄体形成ホルモン (LH) の分泌と排卵時期を調べるために設計された排卵予測キットの使用もう一つの方法です。黄体化ホルモン (LH) の分泌が排卵させるために卵巣を刺激し、プロゲステロンを作ります。

また、排卵を診断するために、骨盤超音波検査を実施することもあります。この検査は、卵巣が未熟の卵子 (卵母細胞) を持つ卵胞が作られているかどうかを診断するものです。卵胞は液体が入っているサック (嚢胞) で卵巣の表面のすぐ下に位置しています。超音波はまた、卵胞から卵子の排出 (排卵) を知る助けにもなります。

基礎体温表や排卵予測キットの使用によって、無排卵やプロゲステロンが十分に作られていないことなどの問題を知ることが可能ですし、又、検査を受ける上で知らなくてはいけない自分の月経のタイミングを知ることが出来ます。

子宮内膜の生体検査も、また、排卵を検査するために、役立つ方法です。クリニックで行われ、10分ほどで終了します。月経が始まる直前に、子宮内膜の組織を採り出します。この方法は多少の苦痛が伴うため、医師はこの検査の前に痛み止めの薬を処方する場合もあります。通常、生検が行われる前に、患者が妊娠していないかを確かめる妊娠検査を行います。取り除かれた組織は病理学者によって、プロゲステロン製造に対して十分に反応するかどうかを顕微鏡で検査されます。子宮内膜の細胞は、月経が始まる1~3日前に採取します。つまり、28日周期の場合は26日目で、子宮内膜において誘発されたプロゲステロンのレベルが一番高いときにあたります。子宮内膜の生体検査は、また、黄体化ホルモン (LH) の分泌から12日から13日後、スケジュールすることも出来ます。担当医師は、子宮内膜の生体検査を行うためには、患者の排卵日、そして次の月経がいつから始まるかを把握する必要があります。取り除かれた子宮内膜の組織が顕微鏡下で十分なプロゲステロン効果が見られないことを黄体期欠陥と言います。この場合、プロゲステロン、または、排卵の治療が行われるでしょう。

卵巣は、排卵後、受精卵が着床しやすくなるように子宮内膜の準備を助けるホルモンである黄体ホルモン (プロゲステロン) を多量に分泌します。排卵後、プロゲステロンのレベルが最高に達したとき、血清プロゲステロンレベルを調べます。通常、28日の月経周期の19日目から23日目に血清プロゲステロンレベルの検査が行われます。

排卵してないことが患者に認められた場合、排卵誘発剤 (排卵を刺激する) が処方されます。排卵のための薬を服用した患者の80%が規則正しい排卵が訪れ、他に問題がなかった患者においては、半数が排卵誘発剤を服用し始めてから6ヶ月以内に妊娠が報告されています。

経口薬による治療が不成功に終った場合、注射による更に効力のある不妊治療薬が処方されます。これに加え、何故、その患者が排卵しないかを調べる特別な検査が更に行なわれる場合もあります。病歴や身体検査等も今後どのような検査が必要かを決定する助けになります。

 3 – 4.子宮頸部による要因

子宮頸部の状態が不妊に関係することは確かですが、このことだけが唯一の不妊の原因とされることは大変稀です。子宮頸部に何らかの問題があるかどうかを知るための性交後に試みる検査があります。この検査は子宮頸部の粘液、精液、そして、この2つの相互作用を診断するものです。排卵以前の、なるべく排卵に近い日に行なわれる検査です。

月経周期中、頸部粘膜は透明で無色、水っぽく、粘着力があり量的にも多いはずです。このような状態下では、精液は子宮、ファロピオ管へと簡単に泳ぐことができます。月経周期の特定な日、または黄体形成ホルモン (LH) の分泌のある日を医師から検査のための性交の日と指定されます。性交後、女性はシャワーを浴びることは許されますが、浴槽に浸かること、灌注、膣用の薬の使用、スプレー、パウダーなどは禁止されます。性交後2時間から18時間後には、子宮頸部の粘膜を採取し、顕微鏡で直ちに検査されます。粘液の質がしっかりしていて、十分な量の運動性の高い精液が膣から採取できれば、顕微鏡による検査は精子が子宮、ファロピオ管へと泳ぐことができることの証明となります。この検査は、クリニックで行なわれ、痛みを伴わず、数分で終わります。

この検査の結果、動いている精子の数が平均以下の場合、精子製造、膣、子宮頸部の粘膜、または、免疫疾患などに問題があることが考えられます。免疫疾患などに問題がある場合、精子を殺してしまうか、または移動不能にするたんぱく質 (抗体) が、子宮頸部の粘膜、または、精子の表面、または精液中に、またはこの3つの全てに存在していることになります。

精子を殺してしまうか、または移動不能にするたんぱく質 (抗体) の存在の有無を調べるために、子宮頸部の粘膜、精子、お二人の血液検査が必要な場合もあります。

子宮頸部の粘膜が検査の結果、良くない状態にあるという結果が出た場合、または、粘膜の量が十分でないとわかった場合、子宮頸部が適切に機能していない可能性があります。または、検査自体が、月経周期の適切でない時期に行なわれた結果である場合もあります。または、十分でない子宮頸部の粘膜の製造は以前の子宮頸部の手術による可能性もあります。

子宮頸部の問題は通常、抗生物質、または、ホルモン治療によって治療されるか、または人工受精によって解決される場合もあります。担当医師に、以前の生体検査、手術、子宮頸部のレーザー治療、異常子宮頸がん検査結果、または、患者の母親が妊娠期間中にジエチルスチルベストロール (合成エストロゲンの一つ) を使用したかどうかなどを、前もって伝えることは、大切です。

3 – 5.子宮による要因

子宮用にデザインされた特別の子宮内用レントゲン (HSG) は、子宮内、またはファロピオ管の欠陥をみつけることが可能です。特別な媒体 (染料) を、頸部を通して注入されます。その染料は、まず子宮を満たし、ファロピオ管へと移動し、子宮に傷のある組織・ポリープ・筋腫・異常な形の空洞等がある場合はそれらを示します。不妊に悩む女性の5%にみられるこれらの疾患は早期の受精卵の着床を妨げ、流産の確率を上げる要因となっています。子宮内用レントゲン (HSG) はまた、ファロピオ管が詰まっている場合には、それを示します。それ以上の診断が更に必要な場合、子宮の構造的な問題やファロピオ管の詰まりを直すためには、手術が必要になります。ヒステロスコピーが更なる診断、または、子宮内用レントゲン (HSG) によって発見された異常に対しての治療に使用されます。

3 – 6.腹膜による要因

腹膜による要因とは、例えば、腹膜の癒着や子宮内膜症などを含む異常を指します。外科的方法であり医師が女性患者の臓器内を見ることが出来るラパロスコピー (腹腔鏡検査法) は、傷がついた細胞 (癒着) や子宮内膜が子宮外に出来始めてしまっている状態である子宮内膜症などの問題を明らかにします。この細胞は色々な形で骨盤内に広がる可能性があります。子宮内膜症は不妊の問題を抱えている35%の女性に発見されますが、ラパロスコピー (腹腔鏡検査法) を実施する以前は、なかなかこの不妊の原因をみつけられない方が多いようです。

ラパロスコピー (腹腔鏡検査法) は通常、全身麻酔のもとに行なわれます。ラパロスコープと呼ばれる光が点いた細い望遠鏡のような器具を、へその真下付近に小さな切開から、挿入します。医師は、直接、腹部腔を診ることが出来、卵巣、ファロピオ管、子宮、腹膜等を検査できます。染料も通常、子宮とファロピオ管への通路が詰まっていないかを調べるために子宮を通して注入されます。更に調べる必要が出た場合、陰毛部分の上に更に小さな切開を入れる場合もあります。

ラパロスコピー (腹腔鏡検査法) は腹膜の癒着、子宮内膜症やファロピオ管の疾患を診断する最も簡単な方法と言えましょう。これに加え、レーザーを含むラパロスコピーを使用した様々な特別な方法が、子宮内膜症、腹膜の癒着、卵巣の嚢腫を含む広範囲の疾患を治療するために使用されています。多くの場合、快復するまで6週間近くもかかる腹部切開開腹術は、ラパロスコピーを使用した様々な特別な方法で治療が可能な現在、不必要です。

3 – 7.理由が説明できない不妊と稀な要因

およそ5~10%の不妊に悩んでいるカップルは、上記全ての検査で全く問題ないという結果が出てしまうため、更なる徹底的な検査をする必要があります。

不妊治療、及び、人工受精は、説明できない不妊の治療として使われてきています。もし、3~6治療周期中に妊娠が認められない場合、更なる不妊要因を診断する検査が必要かもしれません。全てのカップルは、それぞれ違う環境下で生活し、治療への成功は同様に説明できません。たとえ、ひとつの治療が不成功に終わったとしても、もう一度、同じ治療法を試みることも出来ますし、不妊要因をもう一度診断しなおすことも可能です。多くの場合は、補助生殖技術 (ART) を使った人工受精や体外受精 (IVF)、ドナー (卵子、及び、精子提供) プログラム、養子縁組なども他のオプションとして使われます。

米国国内の平均としては、補助生殖技術 (ART) プログラムである体外受精 (IVF) の成功率は15~20%です。(一回の体外受精周期から生きて誕生した確率を指す)

体外受精 (IVF) の成功は多くの要因に依存しますが、特に、女性の年齢、女性側の不妊理由は重要な要因とされています。体外受精 (IVF) 治療を3周期 (3回) 行なったカップルの妊娠率は50%と言われています。補助生殖技術 (ART) プログラムには、生殖細胞卵管内移植 (GIFT, Gamete Intra-fallopian Transfer, 卵子と精子を卵管に直接注入する) 、接合子卵管内移植 (ZIFT, Zygote Intra-fallopian Transfer) 、ドナー (提供者) 使用の受精卵移植、顕微操作なども含まれます。精子・卵子の冷凍保存、受精卵冷凍保存も可能です。ドナー (提供者) 使用の受精卵移植によって、卵巣のない女性でも妊娠が可能となります。

4.不妊治療が与える心理的な負担

不妊はカップルにとって精神的な痛みを伴う状況です。怒り、悲しみ、罪悪感、不安などを伴うこともあるでしょう。このような感情は、患者自身の自尊心や自己イメージにも影響を与えます。このような感情を、家族や仲の良い友人にぶつけることも難しく、孤独に陥ることもあり得ます。不妊の問題を抱えているときに、このような感情を経験するのは普通ですし、不妊の問題を持っているのは自分だけでないことを忘れないでください。お二人の不妊治療の選択と併せた妊娠の可能性を話し合うのは担当医師の責任ですが、カップルのお二人のみが不妊治療をどこまで追及するかを決めることが出来るのです。検査・診断、そして治療は多くの意味でストレスを感じざるをえないプロセスです。お二人共通の目標と、協力しあって受ける治療について合意し確かめ合うことは非常に重要です。また、どの程度まで努力してみるか、言い換えれば、努力して不成功に終わった場合、どの時点で他の方法論を探すか、をお二人の間で決めておくことも大切です。

5.終わりに

妊娠を妨げる要因を容易に発見し解決できることもたまにある反面、多くの場合は不妊理由を特定し治療することは簡単ではありません。そのようなカップルの場合、治療を始める前に、徹底した検査が必要とされるでしょう。最新の不妊治療は妊娠を保証するものではありませんが、徹底した検査によって、患者はおよその妊娠する確率を知ることができます。どのような治療を行なっていくかを決めるのは、患者自身です。行なっていた治療を、休むことも (止めることも) 患者が決めることです。また、どんな状況にあったとしても、現代では、不妊でお困りのカップルにとって、補助生殖医療技術から養子縁組に至るまで、親になる喜びを与えてくれる多くの方法があることを忘れないでください。

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