診断の前に
- -1.すべてのしこりが癌とは限りません
- -2. マンモグラフィ (乳房X線写真) とは何でしょう?
マンモグラフィ検査が行われる前に尋ねるとよい質問 - -3. 生体検査と診断
穿針 (せんしん) 生検
外科生検
生検と手術を 2回に分けて行う (2ステップ) または、同時に行う (1ステップ)
生検と手術:2回に分けて行う (2ステップ) 場合
生検と手術:同時に行う (1ステップ) 場合
生検と手術を同時に行う “有利” な点は
生検と手術を同時に行う “不利” な点は
生検と手術を2回に分けて行う “有利” な点は
生検と手術を2回に分けて行う “不利” な点は
生検を行う前に医師に聞くべき質問 - -4. 生体検査の結果出てきた後
3-1. すべてのしこりが癌とは限りません
まずあなたが、かかりつけの医師や婦人科に行ったとしたら、外科医を紹介されるでしょう。しかし紹介されたからと言って、あなたが癌にかかっていることを示唆しているわけではないことを覚えておいてください。かかりつけの医師や婦人科の医師は、乳房の変化を診察することにおいて、外科医と同等の経験を持っていない場合は多いので、専門家に乳房を診察してもらうことが、第一歩です。
3-2. マンモグラフィ (乳房X線写真) とは何でしょう?
マンモグラフィとは、特別なタイプのX線です。マンモグラフィは、あなたや経験のある専門家がしこりを感知できる以前に、初期ステージの乳癌を発見することが出来ます。
マンモグラフィは、特別に乳房撮影のためだけに設計されたX線装置によって撮られます。マンモグラフィは、放射線専門施設、病院、診療所で行われます。
マンモグラフィを行う施設は、必ず専門的な標準に適合している必要があり、米国食品医薬品局 (FDA) から認可を受けなければいけません。標準に適合している施設は、米国食品医薬品局 (FDA) から証明書が発行されます。あなたがマンモグラフィを行う施設に証明書を見せてほしいと要求することは何も失礼なことではありません。または、American Cancer Society (米国癌協会) に問い合わせることも可能です。
マンモグラフィの実質所要時間は、数分です。しかし着替えや待ち時間を入れた総合時間は 20分ほど見ておいたほうがいいでしょう。当日は、汗止めのパウダーや腋臭止めなどの使用は控えましょう。パウダーなどの使用はX線に影のように移る可能性があります。
ウエストより上の洋服は脱ぐように指示され、前開きのガウンを渡されます。機械はあなたの身長に合わされます。
ガウンの前を開けて立ち、一方の乳房を板に乗せます。技術者が乳房の位置を確定した後、透明の板が乳房の上に乗せられ、乳房を挟みます。こうすることにより、乳房は圧縮され内部の構造がはっきり見えるのです。
残念ながら、圧縮する板は通常冷たいものです。板を暖めておいてくれる心配りのある技術者もいるようです。
もし、マンモグラフィを受けて一週間しても何も連絡がない場合は、電話をして結果を確認してください。
通常、各乳房、 2枚ずつの画像を撮ります。横からの画像と、上からの画像です。画像が撮れ次第、すぐに圧力を与えていた板は取り除かれます。
一旦、技術者によってそのフィルムが確実に画像を捉えていることを確認されれば、終了です。画像が不十分なときは、 1~2枚余分に取る必要がある場合もあります。余計に画像を撮影することを求められても、何か、乳房に問題があるわけではありません。
マンモグラフィは痛くありません。熟練した技術者は患者をどう位置につかせるか熟知しています。ただ乳房のみを圧迫する代わりに、圧力は胸板にもかかるように分配できます。
乳房を圧迫されたとき、不快を感じるかもしれませんが、圧迫は技術者がコントロールパネル (操作スクリーン) に行き、X線写真を撮る間だけの、ほんの短い間のみで終了します。
もし、圧迫が痛みを伴う場合は、技術者に圧迫を緩めてもらうか、調整してもらうように頼んでみましょう。
施設によっては患者自身が圧縮を調整できるようになっているようです。調査から、そのようなアレンジは、患者を安心させ、実際より良い画像が撮れることがわかっています。
マンモグラフィ検査が行われる前に尋ねるとよい質問
以下が、マンモグラフィ検査が行われる前に聞いておきたい質問の例です。
- どの施設で、マンモグラフィを行うのが良いか
- マンモグラフィために、何を準備すれば良いか
- マンモグラフィの結果はどのくらい時間がかかるか
- マンモグラフィの結果を知るために、医師 (医療機関、施設) が電話をくれるのか、自分が施設に電話をするのか
- 放射線技師と画像について話し合うことができるか
- マンモグラフィの料金
- マンモグラフィに対し、保険がきくかどうか、どうやって調べればよいのか
3-3. 生体検査と診断
乳房超音波診断は、マンモグラムや触診でみつけられた乳房の異常を診断するために行われます。超音波は乳房のしこりを確認するのに有効です。また、嚢の袋の中の液体を取り出す針を使用することなく、嚢腫が存在するかどうかを調べるのに一番簡単な方法です。
しかしながら、しこりが存在する場合、または、マンモグラムで何か異常がみつかった場合に、生検のみがそれが癌かどうかを確かめる唯一の方法です。外科医は、疑わしい組織の一部、または全てを取り出す必要があります。その標本は、顕微鏡で癌細胞が認められるか否かを調べる病理学者に送られます。
たとえマンモグラフィに異常がないと出たとしても、もし、疑わしいしこりが触診で認められた場合には生検を行うべきでしょう。
生検を行うことに同意する前に、セカンドオピニオンをとるべきです。あなたの担当医師以外のもう一人の同じ病院の専門家があなたのマンモグラフィを診て判断します。あなたがセカンドオピニオンを望めば、あなたの担当医が、セカンドオピニンを得るために手配してくれるはずです。または、あなたが選んだ専門家にフィルムを送ってもらうように手配をしてくれるでしょう。
もし、あなたが通っている病院が大きな癌専門の病院でなく、セカンドオピニオンを聞くことができる複数の専門家がその病院にいない場合には、乳癌の診断を専門としている病院へ、過去のあなたの全てのマンモグラフィを廻してもらいセカンドオピニオンを得るための手配を頼みましょう。または、あなた自身が過去の記録を持って、セカンドオピニオンを聞きにいくことも可能です。
マンモグラフィを正確に読むには非常に高い技術と長い経験が必要とされます。必ず、熟練した専門家に診断してもらうことが必要です。
生検の方法
腫瘍の一部、または全部を取り出す生検は、針か、または手術によって行われます。どちらの方法によって行われるかは、しこりの大きさと場所によって決定されます。どの方法で行うか前もって医師に確認をとりましょう。
医師が 「生検は必要ないのではないか」、と決定したとしても、もし、乳房になにか感じるものがあり気になる場合は、自分の直感を信じましょう。あなたが懸念に思うことを医師にためらわずに話しましょう。または、セカンドオピニオンを聞きに他の医師に行くべきです。
穿針 (せんしん) 生検
穿針生検は診療所で、または病院の外来で行います。
2通りの穿針生検があります。
細針吸引生検 (Fine-Needle Aspiration biopsy, FNA)
細い針、または注射器を使用し細胞や体液を吸引する方法。
針生検 (Core biopsy)
マンモグラフィが異常を示した乳房のしこりの一部分や乳房の細胞の一部を太い針を使用して取り出す方法。
どちらの生検においても標本は分析のために病理学者に送られます。
“細針吸引生検” や “針生検” を行う場合、医師は、触診しながら針を異常な場所へと導いていきます。異常な箇所が小さすぎて感知するのが不可能な場合、放射線医か、または他の医師が定位器具か超音波を使って針を目標に導くようにします。
“定位針生検” とは、マンモグラフィからの情報を分析するためにコンピュータが使用される方法です。コンピュータは、針が刺されるべき異常な箇所における正しい方向性と深さを決定します。この方法は、微小石灰の生検を行う場合に使われます。コンピューターは乳房の異常な部分から跳ね返ってくる響きのパターンにより画像を作り出します。とても小さな腫瘍や嚢腫へ針を導く場合にこの方法が使われます。
まだ月経がある場合 (閉経に至っていない場合) は、毎月、月経が来るたびに乳房が張る人も多いでしょう。しかし、もしその張り方が異常な場合は、その張りや固まりが、嚢腫 (水が入った嚢) か、腫瘍でないかどうかを調べるために細針吸引生検を行う場合があります。吸引が行われ、嚢の水が流出したあと、しこりが無くなった場合は、癌ではなく単なる嚢腫であったことを示します。ほとんどの乳房のしこりは癌ではない、ということを覚えておいてください。
針生検で使用される 2種類の特別な機器はマンモトームと呼ばれる吸引式組織生検装置と、ABBIと呼ばれる先進的乳房生検装置です。マンモトーム生検は外科的切開生検に取って代わる方法です。マンモトーム生検 (吸引式組織生検装置使用の生検) では、マンモグラフィ等で位置を確認しながらマンモトームを乳房に挿入します。マンモトームの自動吸引装置が標本組織を取るために吸引・切離します。マンモトーム生検では一回の刺入のみで確実な診断が出来、局所麻酔によって行われます。ABBIと呼ばれる先進的乳房生検装置を使用する生検では、細針吸引生検、芯生検、マンモトーム生検より多くの組織を取り除きます。この生検も局所麻酔によって行われます。
外科生検
以前、外科生検は、病院に一泊の滞在が必要でしたが、今日では、ほぼ全ての手術が外来で行われるようになりました。
“部分的生検” と呼ばれるしこりの一部分を切断する方法と、“全摘生検” との2種類の外科生検があります。
「しこり」 が癌であった場合、その周りの乳房の細胞と共に切除する方法を、腫瘍除去手術 (ランペクトミー) と言います。
「しこり」、または、「疑わしい箇所」 が小さすぎる場合は、放射線技師が針等を使用して医師が感知できるように助けます。この方法も局所麻酔が使用されます。
生検と手術を 2回に分けて行う (2ステップ) または、同時に行う (1ステップ)
今日の乳房ケアにおいては、生検の後、もし手術が必要な場合には、日にちを改めて行われることがほとんどです。たまに、生検と同時に手術も行われる場合もありますが、生検と同術が同時に行われる前に、準備万端に全ての選択肢を把握しておく必要があります。
生検と手術:2回に分けて行う (2ステップ) 場合
20年ほど前までは、生検と手術が同時に行われていました。現在では、もし、手術が必要な場合には、患者もその医療チームも、生検の日から日を改めて行う方が精神的負担が少ないため好ましい選択とされています。大抵の場合、生検は外来で行われます。居所麻酔のため、意識はあります。多くの患者は居所麻酔と鎮静剤を併せた方法を選びます。鎮静剤は神経をなだめ、不安な気持ちを静めます。生検はほぼ一時間で終わります。鎮静剤の効力が弱まる1~2時間後に帰宅可能です。
生検と手術:同時に行う (1ステップ) 場合
今日、生検と手術を同時に行うことはほとんどなく、通常、勧められる事もなくなってきています。ほとんどの病院や州では、生検と手術を分けて行うようになっています。もし、あなた自身、またはあなたの担当医師が、生検と手術を同時に行う方が良いのではないか、と考えているとしたら、
次の事項を熟考してから最終的な決断を下すほうが良いでしょう。
生検と手術を同時に行う場合は、全身麻酔が伴うので、手術中、意識はないこと。
病理学者は、直ちに組織の凍結切片分析 (次の “どう診断されるか?” のセクションの参照) を行う。
細胞が良性の場合は、更なる治療は不必要なため、麻酔から回復した時点で家に帰ることができる。
癌が認められた場合、外科医はすでに患者が同意してある乳房切除術 (Mastectomy) または乳房温存術 (Lumpectomy) を行う。生検の結果について、または、手術が行われたか否かは目が覚めるまでわからない。
明らかに、生検と手術を同時に行う前に、放射線治療を伴う乳房温存術 (Lumpectomy) を選ぶか、乳房切除術 (Mastectomy) を行うかについて、長短所をすべて検討して考える必要があるでしょう。
生検を行う前は、なにがあなたの体に起こっているか定かではありません。もし、癌がみつかったと予想してどうするかをその時点で考えたとしても、実際に見つかり事実となったときにあなた自身がどう考えるかと違う場合があるのを考慮に入れるべきです。
生検と手術を同時に行う “有利” な点は、
生検の結果を数日待つ必要がない
もし生検の結果から癌が確認された場合に、また手術を受けるために病院に戻る必要がない
生検と手術を同時に行う “不利” な点は、
治療選択を考える時間がない
生検の結果に関して、また治療選択に関してのセカンドオピニンを得る時間がない
全身麻酔が必要である
凍結切片分析は、生検と手術を2回に分けて行う場合に行われる固定標本による分析より信頼性がないとされる
癌が認められた場合、どの程度広がっているかを調べる時間がない
診断はどのようなステップを踏んでなされるのか?
採取された組織の標本はどちらの方法であっても、すぐに検査所に送られます。生検と手術を同時に行った場合には、病理学者は凍結切片分析と呼ばれる方法で標本組織を検査します。この検査は直ちに診断が得られるため、もし癌だと検査が示した場合は、外科医は乳房の組織を更に切除しなければなりません。この時点で全ての乳房が切除される場合もあります。凍結切片分析に使用されなかった組織は、固定標本による分析のために使用されます。この方法で結果が得られるまでには少なくとも一日かかり、数日かかる場合もあります。固定標本による分析は凍結切片分析より、組織標本についてのより正確な情報が得られます。
通常、凍結切片分析は生検と手術を2回に分けて行う場合には使われません。全ての切除された組織標本は固定標本による分析に使用されます。もし、固定標本による分析で癌が示された場合、患者は数週間以内に更なる手術を行うことになります。
生検と手術を2回に分けて行う場合では、癌が診断されたとしても、すぐに治療方法を決める必要はありません。乳癌がみつかったとしても、ほとんどの場合、数週間で急激に悪くなるようにことはないからです。つまり、患者は治療方法の選択について、担当医師、家族、友人と納得が行くまで話し合うことができ、自分にとって一番の方法を決定することができるのです。
乳癌は治る可能性がある病気である、と言うことを忘れてはなりません。
特に、早期に発見したときは、その可能性は高いのです。
あなたがどの方法を選択しようとも、その決意があなたの人生に大きく影響します。つまり、時間をかけて検討するべきことではないでしょうか。
生検と手術を2回に分けて行う “有利” な点は、
生検と手術を同時に行った場合より、より確かな診断が得られる
病気が広がっていないかを検査する時間が得られる
現在の病気の状況に基づいて、癌治療専門の医療チームと可能性のあるすべての治療選択肢を検討できる
必要な場合は、検査結果や今後の治療についてのセカンドオピニオンを得る時間がある
どの治療方法が自分に、自分の人生のために一番合っているかを自分のために考える時間が得られる
もし乳房切除術 (Mastectomy) を選択、または必要とする場合、乳房再建術について、行うタイミングも含めて考える時間が得れる
生検と手術を2回に分けて行う “不利” な点は、
生検の結果を数日待たなくてはいけない
もし、検査の結果が癌であった場合、更なる手術のために病院にまた行かなくてはいけない
生検を行う前に医師に聞くべき質問
以下に生検を行う前に聞くべき質問を羅列してみました。もし、以下の質問以外に疑問、懸念がある場合は、メモに残しておきましょう。質問表を作り、医師との約束には、持っていきましょう。
どの種類の生検を行うのか?どうしてその種類が自分の状況にふさわしいか?
生検と手術を同時に行う1ステップ法を勧めるか、生検と手術分けて行う2ステップ法を勧めるか? また、どうしてその方法を勧めるか?
(医師の意見を聞くと同時に、あなたは、あなた自身が納得行く方法を取るべきです。)
どのくらいの時間が生検を行うにあたってかかるか?
生検中は意識があるか、ないか?
傷跡はどこにつくか? どの程度の傷か?
生検の結果はどのくらい (日数) でわかるか?
生検の結果を知るために、自分が医師に連絡をするのか? 医師が自分に連絡をしてくるのか?
医師、または関係者が生検の結果について説明をしてくるか?
いつ包帯をとることができるか?
いつシャワーを浴びることが出来るか?
縫った部分は自然に体に溶け、そのままにしておいていいのか、または病院で抜糸するのか?
3-4. 生体検査の結果出てきた後
生検の結果が陰性、または良性と戻ってきたとしたら、癌は認められなかったことを示します。次のことを確かめましょう。
- 定期的な乳房の検査は続けましょう
- 定期的なマンモグラフィは行いましょう
- 毎月の自己診断は続けましょう
もし、どのように自己診断をすればいいのか分からない場合は、専門医に聞きましょう。自身で行う自己診断と医師によって行われる触診は、マンモグラフィ同様に大切です。乳房検査 (自己診断、触診) とマンモグラフィは共に必要不可欠なもので、両方あって補足しあいます。どちらかを行えば、いいというものではないことを覚えていてください。