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最新医療レポート<出生前診断3>
誰が受けるべきか?(3) ()

生殖の世界で語られる女性にとっての大台は“35”(2)

米国最先端臨床現場から-最新医療レポート<出生前診断3>前回(12月5日号掲載)から、妊娠年齢が上昇するごとに妊娠中の赤ちゃんの染色体異常の確率であるリスクが高まり、母親の年齢が35歳を境にダウン症の発生が上昇することの説明を開始しています。

ダウン症の確率は

  • 25歳の母親の場合1250人に1人
  • 30歳の母親の場合1000人に3人
  • 35歳の母親の場合300人に1人
  • 45歳の母親の場合35人に1人

と米国では公表されています。

年齢が上がるごとにダウン症だけではなく、他の染色体の異常も起こり得ます。これは、卵子(卵巣)が老化することが主な要因ですが、多数回のレントゲン検査、薬の服用、感染症なども染色体異常の理由の一因となり得ます。

また、ダウン症の発生は、母親(卵子からによる)のみの要因であると確定できないことを知っておく必要があります。日本では、障害のあるお子さんが出生した場合に、母親が責められるケースがある、と弊社のクライアントからよく伺います。ダウン症発生の約25%は父親の精子に問題がある、と推測されていることも記しておきます男性不妊については、別のシリーズで説明することにいたします。

この数十年、先進国で女性の社会での活躍度が上昇すると同時に妊娠年齢をもが上昇し、生殖医療上の大台である35歳より高齢での妊娠が増加しています。米国では10年以上前から、全ての35歳以上の妊婦に対しては精密度が高い出生前診断を推奨しており、この診断は妊娠検査の一環として保険でカバーされる項目です。また、米国では、高齢妊娠の母親のみに限らず、染色体異常をそれほど視野に入れなくてもよい20代も含めたほとんどの妊婦が40週の妊娠期間を通して数回に亘る出生前診断スクリーニング検査を妊婦検診の一環として行っています。

医療がここまで進歩していなかった以前は、最もシンプルな質問でありながら、妊婦が言葉として発したくなかった“おなかにいる赤ちゃんは健康だろうか”という疑問への答えは出生時までわからなかったものです。しかし、現在では、多くの出生前診断スクリーニングを行なうこと自体がリスクを伴わないものであるため、簡易な検査によって安心という利益をもたらす利点があるのです。

ニューヨークビズ 2016年1月16日号:Vol.517掲載
米国最先端臨床現場から 最新医療レポート<出生前診断3>