性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断を成功させるためには(1)
前回までのレポートでは、性染色体を含む23対の染色体異常を調べる着床前診断を望む場合、着床前診断は体外受精を伴うこと、不妊であることが前提とされ る体外受精、という過程を経る健康な女性は、普通の体外受精サイクルを行なう治療同様、またはそれ以上に、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)について注意が 施される必要があること、そして、適切で緊密な治療がなされない場合は、最終目的である成功が達成されないだけではなく、重篤な副作用が起こる、ことを説 明いたしました。
今回以降は、性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断を成功させるために知っておくべき治療の基本を説明いたします。
22対の常染色体の着床前診断を行なうことは、本来、移殖しても、受精卵の染色体異常があって着床しないケース、着床しても染色体異常のために化学的妊娠 で終わってしまうケース(軽度で一過性のHCGレベルの上昇)、着床しても染色体異常のために早期流産として淘汰されてしまうケース、または、妊娠が継続 して出産に至っても遺伝子異常を持って生まれてくるケース全てを、前もってスクリーニングできることから授精後、受精卵の数がこのスクリーニングによって 少なくなったとしても、健康ではない受精卵による妊娠のための移殖、及び、必要のない精神的な打撃を回避できるために、意義があります。しかし、性染色体 (男女産み分け)の場合は、本来では移殖できる健康な受精卵であることが“22対の常染色体の着床前診断”によって証明されても、その受精卵が希望の性 (XXが女子、XYが男子)である必要があるため、移殖できる受精卵の数が半分になる、ということを知っておく必要があります。生物学的に、精子のX因子 とY因子の数は50:50である、ということは証明されています。(男性パートナーが精子に支障をきたす疾病に罹った履歴、精子に打撃がある環境にあった ことがある履歴がある場合は例外)つまり、性染色体(男女産み分け)を希望する患者様は、移殖できる受精卵の数が半分になるため、より健康な卵胞を多く 持っている、健康な女性である必要があります。この性染色体(男女産み分け)選別により移植を希望することは、卵巣が弱っている、または卵巣が加齢してい る不妊のケースは難しいことになります。
22対の常染色体の着床前診断を行なう場合も、性染色体(男女産み分け)を目的とする場合にも、まず大事なのはご自分の生殖能力を知るところから始まりま す。その能力の結果により、着床前診断を行なったあとでいくつ程の受精卵が分割を続け、移殖のために残るか、良質は期待できるか、妊娠率はどの程度、見込 めそうかが、予想できるからです。
Weekly Biz 2013年6月1日号:Vol.394掲載