商業代理出産が合法であった数少ない国のひとつであるメキシコへ依頼者は移動したものの、その大移動が問題になり、外国人による代理出産依頼は禁止され、世界中で商業代理出産の取り締まりが強化され、批判が表面化している中、合法ではあるものの高額である米国を避ける依頼者が、数少ない商業代理出産が合法であるジョージア、ウクライナ、そしてロシアに集中し始めたところでコロナ禍が勃発したことを前回=2月6日号掲載=まで説明いたしました。
20年春以降、コロナ禍により、世界中の通商が完全に止まったことが、代理出産にも大きな影響を与えました。コロナ禍の拡大を抑えるために、各国境閉鎖が実施されたため、通商はもちろん、人の動きが完全に制約されたためです。延期せざるを得ないビジネスや商品は待つことは可能ですが、命ある赤ちゃんは誕生を待つことができず、依頼者は赤ちゃんを速やかに迎えに行けない、という状況を作り出しました。
通常は、依頼者は、赤ちゃん誕生前に代理出産の地へ入国し、誕生を待ちます。健康に出生した場合、新生児検診を経て、出生の数日後には親権を持つ依頼者に引き渡され、赤ちゃんの親として人生を開始し、依頼者が赤ちゃんの出生登録を行い、出生証明書の取得する、というのが契約の流れです。しかし、依頼者が入国できない場合、赤ちゃんの責任を持ち、世話をする親が不在、ということになります。赤ちゃんの出生を心待ちにしていた依頼者も渡航不能、赤ちゃんが出生した地に入国不可能、そして、赤ちゃんの所在の不安や、実質的に赤ちゃんの世話に関する懸念問題もあり、精神的、経済的な負担が生じる、という予測できなかった事態を招きました。
(次回は4月第1週号掲載)
当文献は創刊47周年を迎えるニューヨークの日本語新聞New York ビズ 2021年3月6日に掲載されました