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インド代理母出産規制
代理出産メディカルビザ(医療査証)誕生の本当の理由 ()

メディカルビザ(医療査証)は、同性愛者依頼による代理母使用からの子の誕生を避けるためだけの方便ではない

2013年3月にインド政府は、代理母を使用する外国人は “代理母のためのメディカルビザ(医療査証)”にて入国する必要があり、代理母を扱うクリニックには、“代理母のためのメディカルビザ(医療査証)”を所持していない外国人の受け入れを禁止の徹底を発表したが、そもそもこのガイドラインが生まれた理由が、明確になってきた。

このメディカルビザ(医療査証)申請に必要な要件は

  1. 2年以上婚姻関係がある異性合法夫婦
  2. 在インドの当該外国人が属する大使館か、当該外国人の国家の外務省が発行する書簡の発行。この書簡には以下の2つが明記されている必要がある。
  • 当国は代理母制度を許可する
  • 当夫婦の依頼により、インドの代理母から出生した子は、依頼者と血縁関係にあることから当国に入国する事を許可する
  1. 依頼夫婦は代理母から出生した子供を責任持って引き取る
  2. 代理母に関連する治療はICMRで認可されている生殖医療クリニックで行なわれる
  3. 代理母契約書は、代理母候補と代理母依頼を行なう夫婦間で署名され公証される

であるが、当初は、1の要件を見るところによると、同性愛者からの子の出生を避けたいオーストラリアや英国らの本意を受けた措置ではないか、とされたが、この理由以外に、本来のビザ(査証)の誕生の理由・目的が、2と3に表れている。

それは、近年、ムンバイで代理母から誕生した子に異常が出ていたために、子を引き取らずにインドに残し帰国する外国人のケースが数件あった事が問題化したことによる。インドにとっては、遺棄された異常のある子を抱えることは、大変な国家的コスト(負担)となる。インド国としては、その不合理な責務を回避するために、代理母依頼者の国の責任であることを明確化する必要があった。そのため、この絶対要件の2である依頼者の国家からの代理母使用に対する確認の明文化は最も大切な要件であるとされる。

現在、日本には代理母に関する法律はないため、日本国政府が代理母に関して言及する書簡を発行することはできない。これは、代理母を否定するものだから発行できないのではない。日本国は代理母に関する法律がないので、否定する立場でも、肯定する立場でもなく、存在しない法律に関しては、書簡に言及することは不可能、ということである。

メディカルビザ(医療査証)申請の要件である日本政府からの書簡の提出が不可能という前提から、代理母目的の入国に関し、ツーリストビザ(観光査証)での代替入国が可能かどうかを2013年5月21日に東京文京区大塚にあるインドビザ申請センター東京 (India Visa Application Center, Japan)のインド人担当者に再度確認したところ、代理母にための渡印は、ツーリストビザ(観光査証)では絶対に不可で、メディカルビザ(医療査証:医療内容の欄に代理母使用と書く)が必要、ということであった。担当者から、メディカルビザ(医療査証)申請の要件の中で最も大事なものはこの要件2の

在インドの外国人が属する大使館か、外国人の国家の外務省が発行する書簡の発行。
この書簡には明確に 以下の2つが書かれている必要がある。
当国は代理母制度を許可する
当夫婦の依頼により、インドの代理母から出生した子は、依頼者と血縁関係にあることから当国に入国する事を許可する
である、と強調された。これは本メディカルビザ(医療査証)誕生の本来の理由が、そこに帰属するからであろう。

この書簡が国から発行されない、もしくは、資格制限(2年以上合法婚姻状態にある異性夫婦であること)に抵触することからインドの代理母用メディカルビザ(医療査証)が取得できないために、治療が止まっている世界中(多くはヨーロッパ)の依頼者からの不安、不満は5月に入ってより高まってきている。新たにインドの代理母使用を考えていた依頼者は勿論、3月以前にすでに契約を済ませていていた依頼者、精子サンプルを次の代理母治療サイクルのために冷凍保存していた依頼者、冷凍受精卵が保存してある依頼者も、渡印には当ビザ(査証)が必要であるため、取得できないことが明確であるほとんどのケースは、クリニックから治療の停止を言い渡されているためである。クリニックからは、いまだガイドラインの変更もありえる流動的な期間であるとし、5月一杯は完全なキャンセル(支払ってある料金の払い戻し)はせず、状況を見守りたい、と言われているものの、待機している世界中の依頼者は戦々恐々としている。

そんな中、インド政府が、当ビザ(査証)の要件であった資格制限:2年以上合法婚姻状態にある異性夫婦であること、の見直しを行なう、というニュースが5月13日に入った。

インド政府代理母メディカルビザ(医療査証)申請要件の見直し:独身は可?

この報道によるとインド政府は“資格が無いとされていた独身者に関しては代理母メディカルビザ(医療査証)を申請できるかどうかを見直す”ことを決定した、という。当ビザ(査証)の要件である資格制限:2年以上合法婚姻状態にある異性夫婦であること、の意味は

  • 同性夫婦(同性愛者)
  • 婚姻関係が2年以下の異性夫婦
  • 独身者

の排除を包含した内容であるが、今回のインド政府の再考は、依頼者である同性愛者の国が同性愛者の婚姻を認めていない場合、”夫婦”ではなく”パートナー”として関係を成立させているのだから、同性愛者カップルのステイタスは独身であることになり、矛盾と混乱を巻き起こすことになるだろう。

また、今後の動向に関してだが、本来の最も重要な代理母メディカルビザ(医療査証)誕生理由は変化するわけではないので、各国からの書簡の必要性の変更は、まず無いと思われる。

日本が当書簡を出せるようになる日は、日本が代理母に関する法律を制定させたときである。しかし、その法律は、代理母を日本国民に禁止する、という内容になる可能性も、半分はあることを念頭においておくべきであろう。今回のインドの代理母に関するガイドラインができた場合と同様、新たな法律、規則、ガイドラインの成立は、結局、“制限”を意味する。

日本に代理母に関する法律がない、ということは、繰り返しになるが、日本は代理母に対して不可とも可とも制定していないことを意味する。つまり合法でも不法でもない。現時点では、日本人としては、代理母を求める世界中からの依頼者が遵守しているように、入国を意図する国家の規則に対して違法とならないように行動する責任がある。現在、治療が停止されてる世界中の依頼者が他国からの依頼者の動向を相互に探っている。

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