11.患者の食事について
癌治療期間、食欲が優れないことがよくあります。単に食欲がないことに加え、不快、吐き気、喉の渇きなどの副作用が、食を細くする理由です。また、副作用により、味がわからなくなったりする場合もあります。
癌治療中、食事をバランス良く、量もしっかりと取り、十分なカロリーとたんぱく質を摂取することにより体重の減少を防ぎ、エネルギーを与えてくれます。また、副作用の出かたも、食事をあまりとれていない患者より、緩やかであるとされています。
癌治療中の食事療法について医師、看護師、栄養士にアドバイスをもらいましょう。
12.術後のケア
子宮頸部の前癌状態、または子宮頸がんの術後の定期健診は、大変大切です。再発がないかどうかを調べるため、術後、3~4年は、頻繁に検査をすることをお勧めします。
癌治療を終了して、かなりの時間が経ってから、副作用が出てくる場合もあります。この理由からも、定期検査は怠れません。何か健康上の変化が認められた場合には、すぐに医師の診察を受けましょう。
13.精神的なサポートは重要
重い病気と共存することは簡単ではありません。癌患者、そしてその患者を支える家族や友人たちには、多くの問題や挑戦が待ち受けています。このような問題と立ち向かう場合、役に立つ情報やサポート・サービスが多大な助けになります。米国癌協会は、多くの情報を提供しています。
癌患者は、仕事、愛する家族、毎日の当たり前の生活、将来、等の多くの問題に突き当たり、悩みます。検査、治療、入院、医療費に対する懸念なども一般的とされる問題です。医師、看護師、病院のスタッフは、治療について、そして、治療が仕事や生活にどのような影響が出てくるかなどの質問に答えてくれるはずです。ソシアルワーカーやカウンセラーと話をしてみるのも良いでしょう。
親しい友人や親戚もサポートしてくれるはずです。また、多くの患者にとって、同様の病気を持った他の患者と話すことが役立っています。サポートグループに参加し、どのように癌自体や癌治療と取り組んでいるかについての意見を交換することが役に立ちます。しかし、患者ひとりひとりが、各々違うことは覚えておいてください。ある治療がすべての人に最適だとは言えないのと同様、どのように癌に対処していくかという方法も、人それぞれ違います。どんな場合でも、医師に連絡を取り、アドバイスをもらいましょう。
14.改善・治癒の見込み
近年の医療においては、子宮頸部の前癌状態、また、初期の子宮頸がんのほとんどのケースが、全治できるほどになっています。研究者たちは、異常細胞が子宮頸部に深く浸透してしまった場合や他の組織や器官に転移してしまっている子宮頸がん (侵襲性子宮頸癌) を治療する新しく更に優れた方法を探し続けています。
患者やその家族は、将来の展望を心配します。改善する見込みがあるのか、将来をどう設計していけばいいのか、ということです。今までの統計を基に、どのくらいの可能性で治癒できるかを考える患者もいます。統計は、多くの患者数からとった平均であることを忘れないでください。あなたと全く同じ患者は他にいません。つまり何が起こりうるかを予期することは難しいのです。患者の担当医師が、回復の可能性がどのくらいであるかという予後を予期するにはもっとも最適な人です。医師は、どう癌と共存していくか、または完全治癒ではなく寛解 (一時的な緩和・鎮静の医学用語) を目指す話をする場合があります。多くの子宮頸がんの患者が完全に治癒する一方、再発する場合も考えて医師は敢えてそのような話をします。
15.原因と予防
世界中の多くの女性患者を研究することにより、研究者たちは子宮頸部の細胞がなぜ異常な状態や癌に変化するのかを特定することができました。多くのケースでは2つかそれ以上のリスク要因が重なり子宮頸がんが発生するようです。
調査の結果、初めての性交が18歳以前であった女性、また、多くのセックスパートナーをもつ女性は子宮頸がんにかかる可能性が高いことがわかりました。しかし、女性本人の経験のみに基づくものではなく、女性のセックスパートナーが若い頃から性交渉を始めた場合、また、女性のセックスパートナーが、多くのセックスパートナーをもつ場合も、その女性の子宮頸がんにかかる可能性が高まることがわかっています。
いまだに、研究者は、なぜ、女性や女性のパートナーの性生活に関する習慣が子宮頸がんの発生に影響を与えるのかわかっていません。しかしながら、研究の結果、性交から伝染するウイルスが原因となり子宮頸がんの細胞を変化させ、後に子宮頸がんを導くことがわかっています。多くのパートナーを持つことには、感染の確率を上げていることを意味します。
研究者は、パピロマウイルスの性的感染がどう影響するのかを探っています。性交渉によって感染したパピロマウイルスは陰部疣贅 (ウイルスによって感染する陰部のいぼ) も発生させます。これに加え、このウイルスは子宮頸部の異常細胞を起こす原因となり、癌へと導くことがわかっています。パピロマウイルスを持っている女性、またはパピロマウイルスを持っているパートナーと付き合っている女性は子宮頸がんにかかるリスクが平均より高いことがわかっています。しかしながら、パピロマウイルスに感染しているほとんどの女性は子宮頸がんにかかっていないのが事実であり、子宮頸がんを患っているすべての女性がパピロマウイルスをもっているわけでもないことがわかっています。このことから研究者はパピロマウイルスが子宮頸がんの発生のすべての要因ではなく、他の要因も組み合わされているのではないかと考えています。
例えば、性器に起こるヘルペスウイルスも、子宮頸がんの発生の要因のひとつのようです。これらのウイルスがどう係わり合い子宮頸がんを成すのか、他の要因は何なのか、更なる研究が必要とされています。
喫煙も、また、子宮頸部の癌の発生の確率を上げます。どうしてなのか、どう作用するのかはいまだにわかっていません。
また女性の母親が、妊娠中に流産を避けるためにジエチルスチルベストロール (合成エストロゲンのひとつ : 略DES) を服用した場合にも、子宮頸がんのリスクを上げるとされています。この薬は、1940年頃から 1970年の間に使用されていました。珍しい種類の膣がんや子宮頸がんが、母親がジエチルスチルベストロールを服用した場合にみつかっています。
女性の免疫組織が弱まっている場合にも、子宮頸がんの発生が起きやすいことも報告されています。例えば、Human Immunodeficiency Virus (HIV、ヒト免疫不全ウイルス) は後天性免疫不全症候群 (AIDS) の原因となるウイルスですが、このウイルスを持っている場合、免疫組織が弱まるため、子宮頸がんにかかるリスクが上がります。また、器官移植を受ける患者は、新しい器官の拒絶を避けるために、免疫組織を抑制させるための薬を服用します。このことにより、子宮頸部の組織を前癌状態に変える可能性を上げることもわかっています。
他の研究では、避妊薬 (経口ピル) を使用する女性には子宮頸がんの発生のリスクが高いと発表しています。しかしながら、避妊薬自体が直接、子宮頸がんの原因となることは証明されていません。最も主要な要因とされる、早い時期からの性交や一人以上のセックスパートナーを持つことが、患者に多く見られる条件のため、この避妊薬の影響を単独で証明することは大変難しいとされています。(避妊薬の影響のみを図り知るためには、他の条件に合致していない患者を調査する必要があります) それでも、避妊薬の表示には、子宮頸がんのリスクがありえること、そして、毎年の子宮頸がんの検査を行うべきであることが明記されています。
また、ある研究では、ビタミンAが子宮頸部上の異常細胞への変化を防御する、または変化を止める役割を持つことを発表しています。ビタミンAが子宮頸がんを予防するかどうかは、更なる研究が必要とされています。
現在の時点では、子宮頸がんを予防する最も効果的な方法は、早期発見と前癌状態である組織を治療することであると言えましょう。早期発見については、セクション4.の早期発見を読んでください。すべての女性が、担当医師と、年齢、健康状態、いままでの病歴、リスクの要因を基にどのような頻度で定期検査を行うのが適切であるか、話し合うべきです。
(終)