子宮頸がんを予防するために(2)~ 発症に15年かかる子宮頸がん
当文献は、2024年1月10日に子宮頸がんで他界した長年の親しい友人、ビジネスパートナーであった河原麗さんに捧げる。”清水さん、XXXについてアメリカでの見解や治療を調べてもらえると嬉しい!“という要望はもう来ない今、彼女が生前、伝えていたHPVワクチンの普及について、世界の公的機関の統計情報を開示しながら説明していきたい。このプロジェクトは、麗さんと今年成人になる私の娘 *に捧げる。これ以上、大事な人を失いたくない。 同シリーズバックナンバー(1)
*米国ニューヨーク州 Brooklyn Plaza Medical Centerにて13歳(2017年)と14歳(2018年)の2回のHPVワクチン接種済み記録
<世界保健機構の子宮頸がんに関する事実声明をどう読むか>
科学と統計に基づいた分析、計画を基に世界の健康促進を目的に機能している国際連合内にある世界保健機構*では、子宮頸がんについて、重要な事実を以下のように発表している。
子宮頸がんの罹患率と死亡率が最も高い国は、低所得国と中所得国である。 それは、それらの国におけるHPVワクチン接種、子宮頸がん検診と治療にアクセスできないという 社会的、経済的要因を反映している。 ~世界保健機構~
これが世界の統計上の事実であり、大切なメッセージを含蓄していることがわかる。
<子宮頸がんとは>
がんは、最初に発症した場所の名称を使用する。つまり、がんが以降、他の臓器に転移したとしても、子宮頚部からがんを発症した場合は、子宮頸がんと呼ぶ。子宮頚部は、女性の体の子宮と膣を結ぶ場所である。
子宮頸がんは、現在、世界の女性において4番目に多く発生しているがんで、ヒトパピローマウイルス(HPV)は多種ある中、ハイリスクとカテゴリーされる種のヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって発症する。
ヒトパピローマウイルス(HPV)から発症しているほとんど(70%ほど)のがんの根源は、ハイリスクカテゴリーのヒトパピローマウイルス(HPV)16番と18番である。また、HIVのキャリア(保菌している患者)は一般人口の6倍の可能性で子宮頸がんを発症するとされ、HIVと子宮頸がんの関連性が高いこともわかっているが、これは免疫力との関係で、免疫システムが弱い状態にある場合に発症率が上がる。
<ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がん>
多種あるヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、ハイリスクカテゴリーヒトパピローマウイルス(HPV)の当該種が子宮頸部の細胞に変化を引き起こし子宮頸がんとなるが、ローリスク(低いリスク)カテゴリーの他種のヒトパピローマウイルス(HPV)は性器や皮膚にいぼを引き起こす可能性がある。
米国では、ヒトパピローマウイルス(HPV)は最も罹患性が高い一般的な性病である。性的接触があれば誰もが感染する可能性があるため、ほとんどの人が人生のどこかで遭遇しているが、通常、症状はなく、大抵は免疫システムによって体外に除去される。
<当該ハイリスクウイルス(HPV)からのがんの対象は女性だけではない>
多種あるヒトパピローマウイルス(HPV)のうちの当該種、ハイリスクカテゴリーヒトパピローマウイルス(HPV)は男女両性に感染し、女性のみ持っている子宮頸部に対し、子宮頸部細胞変化・子宮頸がん、及び、膣がん、外陰がんになる可能性があるが、当該ウイルスは男性にも感染し、男性の場合は陰茎がん、両性に発生する可能性があるがんとして中咽頭がん、肛門がんがある。ハイリスクカテゴリーヒトパピローマウイルス(HPV)からがんになる男性のケースは多くないが、免疫システムが弱い場合や男性同士の同性愛パートナーのケースで肛門による性交渉がある場合、肛門がんに対するリスクは高まる。**/***
<当該ハイリスクウイルス(HPV)接触から子宮頸がんへの時間~接触から15年はかかる>
ハイリスクカテゴリーのヒトパピローマウイルス(HPV)による異常細胞の発生から始まって、95%のケースの子宮頸がんは、この感染を治療しないことから発症する。当該ウイルスに感染した子宮頸細胞が、まず、前がんの異常細胞になるには約5年~10年、がんになるには約15~20年かかると報告されている。*/** つまり、当該ウイルスがいつ体内に侵入したかは15~20年前の性接触に遡ることになる。
<ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染経路>
性的接触があれば誰もが感染する可能性があるというヒトパピローマウイルス(HPV)だが、どこまでの性的接触が含まれるのであろうか?
最も一般的な経路は、ヒトパピローマウイルス(HPV) の保菌者(キャリア)と、膣、肛門、を介しての性交渉になるが、口(オーラル)も経路となる。ヒトパピローマウイルス(HPV) の保菌者(キャリア)というのは、兆候や症状ない場合が多いため、保菌者本人が感知していないことも多いが、症状がない場合でも感染させる可能性を持つ。また、性的な活動のパートナーが一人であっても、感染のリスクはある。***
今後は、子宮頸がんをいかに防御できるかについて説明を継続していく。
* 世界保健機構 WHO https://www.who.int/ ** アメリカ国立衛生研究所 NIH https://www.cancer.gov/ *** 米国疾病予防管理センター CDC https://www.cdc.gov/index.htm